「家の造りやうは、夏を旨とすべし」という言葉があるように、日本の多くの土地では、特に梅雨期から夏にかけ、多湿に苦しめられます。木材にとって湿気は大敵です。カビや腐朽の主要因である上、住まいの大害虫である「シロアリ」が繁殖しやすい状況を作ってしまいます。
現在の木造住宅は、耐震・耐風力強化の立場から、「布基礎」という、家の基礎部分をコンクリートで囲ってしまう構法が主流となっておりますが、今では寺社や古い民家などにしか見られなくなった、いわゆる伝統構法の建物は、床下の通風に大変優れた性能を持っていました。先人は、そういった日本の風土にあった構法を、長い時間をかけて作り上げ、採用していたと言えます。
一方、古くからの建物でも、土蔵のように、密閉型の構造を持つ建物も存在しており、そういった建物は現在のものと同様、湿気対策が必要とされていたわけですが、実は、閉寒空間の湿気取りとして広く活用されていたのが木炭なのです。
炭による調湿施工は、多湿に弱くなりがちな現代の住宅に、日本の風土を考えた、昔の人の建物保全の知恵を復活させる構法といえます。
近年、木炭は、空気や水の浄化性能や、「マイナスイオン」の増加作用、遠赤外線の発生等の健康増進効果が注目されており、消臭剤、寝具、入浴用等の様々な身の回り品に利用されておりますが、調湿能力につきましても、私の研究の他にも、多くの研究者が各種試験を行っており、その高い性能が明らかになってきています。